『笑わない人々』

シベリア鉄道のこと

2008.09.12
シベリア鉄道。それは甘美な響き。死ぬまでに一度は乗りたかった列車。これぞ男のロマンである。故水野晴男氏もそれを認めてくれるだろう。
そんなロマンもヨメには通じない。乗って何があるっていうの?現実的、実質的。世界最南端の街アルゼンチンのウシュアイアへ行った時も確か同じ反応だった。
 
まずはモンゴルのウランバートルからロシアのイルクーツクまで二泊三日の旅。こちらは三等寝台に乗るつもりが二等寝台となってしまう。
イルクーツクで降りて世界一深いとされるバイカル湖を見学し、一路モスクワへ三泊四日の旅。 合計で五泊六日、ざっと128時間列車に乗っていたことになる。
二等寝台は四人コンパートメント、いわゆる個室。三等寝台は二段ベッドが所狭しと並ぶ。 トイレは一車両に付き前後二つ。お湯はサモワールという給湯器から24時間使うことが出来る。熱源は何と石炭である。暖房も石炭で行う。 とても原始的に思えるが、電気などの熱源では万が一故障した場合、極寒の地では命取りとなるため、確実に暖められる石炭が使用されるのだ。納得である。 車掌さんは女性が一車両につき二人同乗。一日に1〜2度車両内を掃除する。それも掃除機で! トイレも結構な頻度で掃除しているので、決してピカピカではないが十分使用に耐えうる。 ただし、線路上にそのまま垂れ流し状態のため、停車駅の前後は施錠され使用できない。駅構内にあんなものやこんなものが散乱しないような配慮だ。
一応食堂車も連結しているが(ウランバートル−イルクーツクは無かったが)ロシア人らは乗り込む際、必要な食料を持ち込む。僕らもそれにならって袋いっぱいの食料を持ち込む。 と言ってもその内容は貧相で、カップラーメン、パン、ハム、チーズ、リンゴくらいのものだが。
 
さて、ロマンは達成されたが実際どうだったのか。
乗った一日目くらいは、「世界の車窓から」テーマ曲を口ずさみ優雅に食事を取りながら窓の外を眺めたりしたものだ。 シベリアの景色はもっと荒涼とした地を想像していたが、思った以上に緑豊かである。そして、それがずっと永遠に続く。
当然だんだんと見飽きてくるのだ。そうすると今度は眠気に襲われることになる。 眠くなればそのままベッドに横になる。寝ることに飽きると、また食べてみる。 けれど食べ物もバリエーションが無く、これも飽きてくる。 読書をする。持って行った二冊の本は二日目に読み終わってしまう。仕方なくもう一度最初から読む。
モンゴルで土産として買ったコンパクトなチェスをする。南米で旅人に教えてもらったのだ。その時は一回も勝てなかったが今回はヨメが相手。無理矢理教え込んで対戦する。一回負ける・・・。 そのうち風呂に入りたくなる。でももちろん風呂など無い。 最後には到着時間のカウントダウンを始めている。三日目くらいから。
 
結論。もう十分です。

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